メタルフリー

メタルフリー治療とは、歯科金属アレルギーを引き起こす原因となり得る、健康保険で使われる金属(卑金属)を使用せず、金属素材をつかわない詰め物やインプラントを利用する治療方法です。金属アレルギーの方、アレルギー予備軍の方におすすめの治療方法です。

白い歯と銀歯

白い歯、いわゆるメタルフリーの対極にあるのが皆様もご存知の「銀歯」です。専門的なお話に入る前に、先ずは当医院にお通いの患者様がスウェーデンに留学した際に体験した銀歯にまつわる「笑えない笑い話」が印象的だったのでご紹介したいと思います。(患者様ご本人のご快諾を得て掲載しております)

高福祉国家・スウェーデン
スウェーデンといえば、歯科の業界では「予防先進国」として有名です。二十歳未満は歯科の費用はかかりません。矯正治療も無料です。税金も高いようですが、高福祉な国です。また、皆さんもご存知の、家具・雑貨の「イケア」はスウェーデンが発祥です。

面白かったのは食事の話で、ヨーロッパの国だから色々と美味しいものを食べられると思って行ったけれど、実は現地の人はあまり食に興味が無いようで、「とりあえずお腹がいっぱいになればいい」といった感じだったそうです。

というのも、家庭で食べる料理は品数が多くなく、マカロニにケチャップをかけた1品と言うくらい簡単なもの。日本のように食べ方を工夫したり、より美味しくといったことも無いようです。知人は「帰国し、こんなにも色々な食べ物があるのに感謝した」とのこと。

日本人は「より良く」とか「改良、改善」といったことに興味や好奇心が強いのでしょう。それがまた日本独自の文化かもしれません。

ガラパゴス日本
携帯電話や電化製品など、日本は「ガラパゴス」だ、という話を聞いたことがあるかもしれません。

技術やサービスなどが日本独自の進化を遂げて、世界標準からかけ離れてしまうことをいいますが、その患者様も思わぬ形で「ガラパゴス」を体感したそうです。

スウェーデンの人と会話を楽しんでいた時のことです。お相手は患者様の口の中を覗き込むようにしたあと、首をかしげたそうです。「どうしたの?」と聞くと、「奥の方に黒いものがついている」と訝しげに答えました。慌ててコンパクトで見てみると、“普通の銀歯” でした。「何も変なとこ無かったじゃない」そう答えると、「そんな歯は見たことない」と言われたそうです。
「自分では普通だと思っていたけれど...素敵だなと思っていた人に言われたからショックでした」と私に話してくれました。

銀歯は日本独自の技術です
実は、皆さんが当たり前に行っている銀の詰め物や被せ物は、日本独自の治療法です。

昨今、世界的には「メタルフリー」と言って、お口の中に金属を用いないほうが望ましいという流れになっています。実際、銀歯を選択しない患者様や銀歯から「白い歯」への交換を望まれる患者様が当医院を選択してくださいます。

医療を提供する私たち歯科医師も、今一度治療の際には「天然のような白い歯」についてのご説明や、ご希望されるかどうかを確認した方がいいと改めて思う話でした。

メタルフリー治療とは

Dental Art Officeでは、確実性の高いメタルフリー診療を提供できる一方、究極のメタルフリーは「自分の歯」であると考えています。

メタルフリー治療のファーストステップとして、歯を一切削らずに白くする歯のホワイトニングや、歯を削る量が最も少ないダイレクトボンディングなどが、治療の候補として上がってきます。

既に多くの歯を削って失ってしまった場合は、金属を含まない素材を用いた治療を候補に入れて治療計画を立案していきます。

従来の歯科治療では、金属を使った素材を用いるのが一般的でしたが、歯科材料の発展によって、金属を使わない治療が実用的になってきました。このような、金属(メタル)を使わない歯科治療のことを、「メタルフリー治療」と呼びます。

銀歯がある人に知って欲しいこと

銀歯の豆知識
 皆さんがいう「銀歯」って、実際にどんなものなのかを知っている方は少ないと思います。
 銀歯というのは、歯科界では「金パラ」と言われています。銀なのに“金?” とお思いになるかもしれません。
 実は銀歯に用いることができる金属はJIS 規格で「金が12%、パラジウムが20%」と定められています。その他の成分としては銀がおおよそ40 ~ 50%、銅が20%程で残り数%はその他の金属となっています。
 これは、過去の研究結果によって、主成分である金12%、パラジウム20%が添加された金属が、最も耐食性や機械的性質のバランスが良く、当時としては安価に手に入る材料ということで、歯科で用いる金属に定義づけられました。

 とはいっても、これは国民皆保険制度が始まった1960 年代当時の話であり、それから60 年以上を経た、現代における健康に対する価値観とは大きくかけ離れてしまっています。

欧米先進国では使用禁止の金属です
 既に欧米など先進国ではパラジウム合金は金属アレルギーの危険性が高いため使用禁止となっています。
 例えばスウェーデンでは1987 年の段階でパラジウムは妊婦と小児には完全に使用禁止しています。また同じように、ドイツでは1993 年に妊婦と小児にパラジウム合金などを使用禁止しています。

 逆に、先進国の中でこのパラジウム合金を使用しているのは日本だけといっても過言ではありません。
 先ほどお伝えした金属アレルギーの他に、目に見える変化として、銀歯と接している歯茎が刺青のように黒くなる「ブラックライン」があります。
 これは、金属が溶けると金属イオンが放出され、その金属イオンが歯茎に沈着して歯茎が黒くなることです。
 金属から溶け出た金属イオンは当然、お口の中から体内へと取り込まれ、体内に蓄積してしまうため、これが金属アレルギーの引き金となってしまうのです。

銀歯が取れただけ…では済みません
 さて、皆さんもご存知の通り、銀歯と歯をくっつけているのは接着剤です。
 銀歯を入れた後、何年かしてガムを食べた時にくっついて取れてきた、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?これは、銀歯をつけていた接着剤が劣化してもろくなるために取れてきてしまう現象です。
 また、銀歯自体も溶けるだけでなく、金属の酸化によって接着面が劣化しやすいことも原因となります。接着剤が劣化するとその部分は隙間となり、そこから虫歯になってしまいやすいのです。銀歯が取れただけだと思ったら、「虫歯になっています」と言われた経験も多いと思います。

当医院で一切銀歯を取り扱わない理由
 銀歯の再治療は平均10 年、虫歯の再発率は70%以上です。
 当医院で銀歯を取り扱っていない理由…それは、人生100 年時代にパラジウム合金は全く対応していないことを知り尽くしているからです。
 年齢が上がるつれて、実は最適なものを選択していかなければ適応、順応しないと私は歯科医師として感じています。